歯周病

現在の日本人に生じている歯の病気としてはむし歯に並ぶ代表的なものです。
歯周病は原因になる菌が歯と歯肉の間にある歯周ポケットと呼ばれる溝で増殖することにより歯肉の腫れ、歯を支える骨の吸収、歯の神経の病死など様々な病変を引き起こします。
様々な病変に合った治療を行う事により歯や歯を支える骨の寿命を延ばします。

健康な歯肉と歯周病の歯肉

歯周病は、歯を支える歯周組織を破壊する病気で、初期には自覚症状がほとんどなく、気づかない間に進行していきます。

■健康な歯肉

歯肉が健康なとき、歯は歯周組織(歯肉、歯根膜、セメント質、歯槽骨)によってしっかり保持されています。
正常な歯肉は淡いピンク色で引き締まっています。

■歯肉炎の歯肉

歯肉が炎症を起こすと、赤くつやがあることもあり、磨くと出血しやすく、触れると痛むことがあります。
炎症は歯肉に限局して仮性ポケットが出現します。(アタッチメントロスなし)

■軽度歯肉炎の歯肉

歯肉の炎症が進行してくると、発赤、腫脹が著しくなり磨くと出血します。
歯の支持組織にも炎症が進み、歯周ポケットが形成され骨の吸収も始まります。 (アタッチメントロスを伴う)

■重度歯肉炎の歯肉

歯周病がさらに進むと、歯の支えの多くを失い、骨吸収が歯根長の1/2以上になると歯はぐらつきはじめ、膿が出はじめてくると口臭もひどくなり、やがて歯が抜けてしまいます。(アタッチメントロスを伴う)


X線写真による診断

歯周病の進行度は、歯肉を見ただけでは判断できないので、歯槽骨の破壊状態を
X線写真で確認します。
X線写真は歯周病診査・診断・治療計画の立案、さらに治療結果の評価などに活用します。

■健康な人のX線画像

健康な状態のX線写真では、歯槽骨の吸収が見られず歯槽骨頂の位置はセメント・エナメル境から1〜2mm根尖側にあり、歯槽硬を明瞭に見ることができます。

■中等度以内の歯周炎のX線画像

歯周炎は、前歯部と第1大臼歯を中心に部位特異的に骨の破壊が認められることが多いです。中等度の範囲内で炎症の進行を止めることで、多くの歯を残すことが可能です。

■重度歯周炎のX線画像

中等度の歯周炎を放置すると、炎症がさらに進んで歯はぐらつき、噛むと痛いことがあり、やがて抜けていきます。



歯周治療のための歯肉の診査

歯肉は目で見ることができる唯一の歯周組織です。
歯肉をよく観察することで炎症の広がりや強さを判断し、ブラッシング指導の目安にします。
■健康な歯肉 ■浮腫性の歯肉 ■線維性の歯肉
健康な歯肉は淡いピンク色で引き締まって弾力があります。 赤みをおび、やわらかくて薄い歯肉。見かけ上の歯肉の炎症よりも、組織破壊がさほど進行していないことが多い。
プラークを除去すれば、歯肉の変化も表われやすく、症状の回復も早い歯肉です。
(動機づけしやすい歯肉)
歯肉は白っぽく厚く硬いため、深いポケットとして現れます。
炎症もゆっくり進行してゆき、歯肉の変化が表われにくく、症状の回復も遅い歯肉です。
(動機づけしにくい歯肉)

■歯周病には2タイプがあります。

●成人型のタイプ
成人型歯周炎と呼ばれるもので、歯周炎すべてのうち約90%を占めるものです。
多くのケースは口腔内にプラークや歯石が付着していることで、中等度の歯周炎に進行していきます。プラークコントロールが不十分だと50歳頃から症状が著しくなっていきます。
●早期発現型のタイプ(11〜12歳ごろより症状が現われる)
前思春期性歯周炎と若年性歯周炎と急性進行性歯周炎(破壊性歯周炎)に分けられます。これらは歯周炎患者の8%未満ですが、病変にかかりやすく進行も急速なので、プラークコントロールが悪いと重度の歯周病になっていきます。
また、家族傾向がみられるので、遺伝的傾向のタイプでもあります。



歯周ポケットの診査

歯周病の進行状態を評価するうえで欠かせないのが歯周ポケットの診査で、プロービングによって行われます。

■プロービングによる診査

プロービングによって、歯周ポケットの深さとプロービング時の出血の有無を調べることで、炎症の存在と 歯周病の進行程度が分かります。X線写真だけでは把握できない頬舌側の歯槽骨 吸収などの状態をブローブで探って判断します。





■診査の目的は

    1. 1.炎症の有無、位置の確認
    2. 2.根の解剖学的形態の確認
    3. 3.歯石など付着物の位置確認
      などを把握するために検査します。
分岐部病変の診査
[T度] 歯冠巾1/3以内
[U度] 歯冠巾1/3以上で貫通しない
[V度] 完全に貫通する
プロービングはX線写真で骨欠損の状態を把握しながら行います。
6mmのプロービングデプス
プロービング時の出血は炎症の存在を示しています。
SRP後、3mmのプロービングデプス
炎症が無くなり出血しません。



歯肉の病気の原因はプラーク

歯周病の原因は細菌の塊のプラークで、歯周ポケットにプラークがすみつくことで
歯周組織に炎症を起こします。

歯肉縁上プラーク
むし歯や歯肉炎の発症に関係します。

歯肉縁下プラーク
歯周ポケットを発生させ歯周病を進行させます。








プラークは歯と同じような色なので見分けづらく、正しいブラッシングでないと磨き残しが多くなります。 プラークが残ったままだと徐々に歯肉に炎症が発生します。 磨き残りでプラークが除去されていない部分が赤く染まります。



より強固な細菌の巣を形成するプラーク

歯周ポケット内にはさまざまな大きさの活発に動き回るらせん状の細菌がたくさん観測されます。





歯石

歯肉縁上のプラークはブラッシングで取り除けますが、縁下のプラークや歯石は歯科・衛生士が 行うスケーリング・ルートプレーニングでないと取り除けません。







バイオフィルム

プラーク(歯垢)の実体は、最近の集合体であるバイオフィルムです。




プラークコントロールの方法




歯周病の治療ステップと改善まで

歯周病は長い年月を経て進行しているため、治療には少し時間がかかり、患者さん自身の磨く自覚により治癒が左右します。
歯周病は、歯周初期治療で約85%治ります。

歯周病初期治療の期間

歯周書記治療は、1週間に1回の通院で3〜4ヶ月をメドにしています。

歯周炎の治療ステップ


歯肉炎はブラッシングによるプラークコントロールを徹底することで改善していきます。ただし、改善したからといってプラークコントロールを怠ると歯肉炎、歯周炎へと移行します。

中等度歯周炎の治療ステップ

歯周病がある程度進行してくるとブラッシングだけでは治療が難しくなります。
歯肉縁下の歯石やプラークをスケーリング・ルートブレーニングで除去し、口腔内を清潔に 保つことで、歯周病の進行を止め健康な歯肉を取り戻せます。

重度歯周炎の治療ステップ

歯周病が重度まで進行すると、炎症をくい止め機能回復を図るように努力します。
歯肉縁下や根分岐部の病変を除去するために、場合によっては歯周外科手術も
必要になります。

ブラッシングによるプラークコントロール

歯周治療はブラッシングによるプラークコントロールなくして治癒はありえません。

毛先みがき

プラークを確実に除去するには、歯ブラシの毛先を使い分け、歯面に直角に当てて磨くことが大切です。 それには、口腔内のすみずみにまで無理なく毛先が届き、スムーズに動かすことです。
また、細菌は空気が嫌いなので歯周ポケット内で繁殖します。ブラッシングでポケットに空気を 入れることで、細菌がすみにくくなります。






ブラッシングで歯肉の炎症が改善




スケーリング・ルートプレーニング(SRP)

スケーリングは、歯に付着したプラークや歯石、その他沈着物などを器械的に除去することです。
ルートプレーニングは、汚染された根面の軟化したセメント質を除去して、硬くなめらかな根面にすることです。
両方の操作で歯肉の炎症はなくなり、歯周組織がさらに破壊されるのを抑制します。

歯肉縁下のルートプレーニング(SRP)

1)キュレットは歯周ポケット内へ挿入し、根面に対してキュレットの表面の角度が0°に近いことに注意します。 2)歯周ポケットの底部をキュレットの刃の遠心切縁で確認します。 3)キュレットはスケーリングのためのカッティング位置に向きを変えます。 4)刃は歯石を除去するために、スケーリングのストロークで根面に沿って動かします。
SRPは患者さんの負担もあり、一般的に1回の治療で4〜6歯の範囲で行います。








SRPで歯周組織改善



■歯肉縁下のSRPに入るタイミング
・ブラッシング時に出血しなくなる。
・歯肉の発赤、腫脹が治まる。
・ブラッシングにより、見た目にも歯肉の状態が改善されてからSRPを行います。

■SRP後の知覚過敏について
セメント質や象牙質表層部まで除去され、象牙細管が露出するために知覚過敏が起こります。 通常は1週間がピークで象牙細管が石灰化して2〜3週間で消えていきます。


麻酔の使用について
深い歯周ポケット底のSRPは、患者さんによっては多少痛みを伴うことがありますので、事前に麻酔をしてから処置します。

メインテナンス

目的

長期に渡り患者さん自身でプラークの無い状態を維持することは難しいことです。
そこで、定期的なメインテナンスにより歯周組織の健康を維持することが大切です。












プラークコントロール抜きの歯周治療はありえないし、
メインテナンス抜きの歯周治療もありえません。

歯周治療が終了しても、治療後のプラークコントロールが悪ければ再発します。
患者さん自身のホームケアと、歯科医院での定期的なプロケアで、予防と管理が必要です。

メインテナンスの診査と評価

●全身診査
健康状態や口腔衛生状態などをお聞きして、患者さんの生活状態などを把握します。

●口腔の診査
プラーク付着の評価、歯周組織の診査、歯周ポケットの測定を行います。

●X線写真による判定
1年に1回を目安に歯槽骨の吸収程度を観察します。

●メインテナンス後の再評価
再評価の結果を患者さんに伝えて、必要な場合はその処置を行います。

プラークコントロールの 評価 出血があれば炎症の存在を示しています。 分岐部のプラークコントロールとカリエスチェック
 
プラークコントロールが良いと白線が明瞭になります。 垂直性骨欠損、根分岐部など根の解剖学的携帯が複雑な部位などを注意して診査します。  

プラークコントロールの状態に合わせてリコール期間を決定します。

歯周治療においては、定期的なメインテナンスと長期的なプラークコントロールの確立が 最も大切です。
多少の時間がかかっても、患者さんにはよく理解してもらいましょう。